虚無日記

感性が虚無な人間のブログ。

鎌倉の記録(2)

前回書いてから、もうひと月経っていた。あけましておめでとうございました。

かなりうろ覚えになってきてしまったが、もっと忘れる前に書いておく。

 

鶴岡八幡宮に行って、小町通りから少し外れたお店で美味しい漬けマグロ丼を食べた後、私はお目当ての一つだった、鎌倉文学館へ徒歩で向かった。江ノ島電鉄で長谷あたりまで行くことも考えたが、google mapを見て徒歩でもなんとかなるだろうと思ったのだ。

鎌倉文学館は1890年頃に前田利嗣の鎌倉別邸として建てられたという。私はこの建物の方が目当てだった。

大学時代、美術史系のゼミに所属していた私は明治〜昭和頭あたりの建築、特に日本のステンドグラスをテーマに研究していた。「研究」していたというにはあんまりにもお粗末な卒論だったと今更申し訳なくなるような、出来の悪い学生だったが。好きだったのは確かだった。

この鎌倉文学館にも複数のステンドグラスがあり、卒論を書く際に何度も読んだ『日本のステンドグラス 明治・大正・昭和の名品』にも掲載されている。せっかくだし観に行こうと、鎌倉駅から歩いて向かう。

御成通りからひたすら道なりに歩いた。途中、営業時間外で閉まっていたアクセサリーショップ前で立ち止まった。

初めて鎌倉に行ったのは小学生の校外学習だったのだが、県外に旅行に行く経験がほぼなかった(父方の実家へ行くくらい)私はガイドブックまで買って楽しみにしていた。その時に見つけて行ってみたいと思っていた店だった。

当時は小学生で班行動だし、金も時間もないわで行くこともなかったし、どうしても行きたいと思っていたわけではなかった。けど10年以上経ってこうして来たのだと思うと、なんだか不思議な気持ちだった。まだ準備中だったけど。

 

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鎌倉文学館は海とは反対方向、少し高い場所にあった。静かで誰もいないのかと思ったら人が座り込んでいた。おうと驚いたのを悟られないようにちらと見ると、鎌倉文学館の絵を描いていた。後から気がついたが、この日は団体客?と思しき高齢めな方々が来ていたようで、皆思い思いに建物の絵を描いているようだった。こういう老後は羨ましいと思う反面、自分にこんな穏やかな老後が来るとは想像できなかった。子や孫に囲まれて穏やかに過ごす未来より、狭い部屋で独りで過ごし、独りで死ぬ自分の方が余程簡単に想像できる。

 

建物の中は土足を脱ぐようになっていた。穴あきタイツでなくてよかった。しかしブーツ(と言ってもそんなには長くない)が靴箱に入らない。折って入れるか?と考えていたらスタッフの方が靴箱の上に置いといていいですよと言ってくれた。

中の展示を見ていて浮かんだ感想は、『文豪って鎌倉に集結しすぎじゃね』というものだった。同じ時期に全員いたわけではないはずだが、当時の鎌倉に遊びに行ったら一人くらいは遭遇できるんでは、と思うほどだ。だって100人は紹介されてたぞ。知ってる人がほとんどいなくて、自分の無知さが恥ずかしい。少し前に読んだ吉屋信子さんも鎌倉にいたんだ。住居が残っているらしいが、こっちは非公開のようだった。

ステンドグラスも見てきた。見たのだが、『綺麗だね』以上の感想が出てこない。どうなってるんだ。後は子供がステンドグラスの光に当たりながらなんだか神聖そうなポーズを取っているのを見て微笑ましくなったくらいだ。

綺麗なものを見るのは好きなのだが、綺麗とかすごい以上の感想が出てこない。今更ながら美術史系のゼミに入るべきではなかったんじゃないかと思う。感性が死んでいる。いや生まれてすらいない気がする。

 

一通り順路通り見て、鎌倉文学館を後にした。鎌倉駅からここまで歩いて足が疲れていたので、鎌倉駅への戻りは江ノ島電鉄を使った。窓からは多分海が見えたはずだが、疲れていたので反対側の席に座った上車内も混んでいたので、外を全く見ずに鎌倉駅まで戻った。勿体無い。

 

鎌倉駅まで戻ったが、特に予定がない。思いつきで行動するからそうなる。また思いつきで喫茶店へ行った。ここも昔ガイドブックで見つけて憧れたところだった。

おしゃれな店内で、プリンを食べた。プリンは大好物だ。プリンがある飲食店ではかなりの高確率でプリンを頼む。サイゼリヤのイタリアンプリンなんかすごく好きだ。

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コーヒーの方が手前に来ているが、プリンの見た目がもうすごい。この器に入っているだけでテンションが上がる。しかもホイップクリームに胡桃までトッピングされている。

胡桃だけはスプーンで割れないしどう食べるか困ったが、どっしりとした感じのプリンがとても美味しかった。コーヒーも飲みやすくて美味しい。

こんな喫茶店でゆっくりするのに憧れるのだが、ぼっちのチキンなので一息ついて店を出た。一人でいつまでも席を埋めておくのが申し訳なかった。

 

またあてもなく小町通りを徘徊する。google mapを見ていたら、「鏑木清方記念美術館」を見つけた。

鏑木清方に詳しいのかと聞かれたらnoだが、同級生の研究テーマに関連する人物で何度か聞いた名前だった。ここも小町通りから少し外れたところにあるので、混んでいるかもと思いつつ向かった。

全然混んでいなかった。こぢんまりとした所だったが、静かで落ち着く。展示スペースがそんなに広くなさそうなので作品数も少ないかと思いきや、引き出しの中に作品を入れていたりと思ったより数があった。一枚の絵や挿絵なんかはよく見るが、双六なんかも描いていた。

基本的に撮影禁止だが、この美術館は清方の作業部屋を再現したエリアがある。

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卓上にあるのは絵を描くための道具と、資料だろうか(解説にあった気がするが忘れた)。整頓された部屋だな…制作時はともかく、普段も本当はもっと散らかっていたりしなかったのだろうか。

またこの美術館、鏑木清方に関連する書籍も多数置いてあって一応自由に読んでいいらしい。その気になればここで丸一日過ごせそうだ。

 

鏑木清方記念美術館を出る頃にはすっかり夕方だった。

小町通りで家族への土産を買って帰ろうと思いまたしてもうろうろしていたら、鎌倉いとこという店名が目に入った。知っている名前だった。

きんつばのお店だ。小学生の時に鎌倉を訪れる前、亡き祖母と父が「鎌倉と行ったらきんつばかな、好きなんだよね」的なことを言っていた。それで鎌倉へ行った時に二人への土産に、鎌倉いとこできんつばを買ったのだ。当時小遣いは1500円。江ノ島電鉄に乗ったり昼食もここから出したから、祖母と父の分、二つ買うのが精一杯だった。

あの時は長谷寺の近くで買った気がするからこの店ではなかったが、懐かしくなってここで土産を買うことにした。今は一応就職しているから、家族全員分を躊躇うことなく買った。今思えば一人2、3個くらい買ってもよかったかもしれない。

 

こうして土産も買って、さっさと横須賀線に乗って帰った。

文章にしてみると感想らしい感想も出てこなくて、一体何をしていたんだろう…という気持ちにならなくもないが、一人で遊びに行くのは楽しかった。しっかり予定を考えていけばもっと色々なところを回れたはずなので、次は事前調査を行った上でまた来たい。